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医療法人社団養高会が運営する高野病院は、福島第一原子力発電所からほど近い福島県双葉郡広野町にある医療機関です。
1980年に開設されて以来、地域医療の安定に貢献し、2011年の東日本大震災後も患者の命と健康を守り続けました。

高野病院は、震災時の原発事故により故郷を奪われ、未だに自分の家に帰れずにいる人たちの「故郷の近くで人生を終えたい」という思いを受け、今日まで医療の灯をともし続けています。

今回は、2023年に高野病院を第三者承継で受け継ぎ、新たな医療サービスにも取り組んでいる小澤典行理事長に、地域医療の重要性や働く環境などについてお聞きしました。

1989年に富山医科薬科大学（現：富山大学）を卒業し、東京女子医科大学の付属日本心臓血圧研究所循環器内科に入局しました。
約11年の勤務を経て心臓カテーテル治療の指導に従事し、その後は全国のいくつかの病院の院長として経営改革に取り組んできました。

東日本大震災の直後は、双葉郡で唯一の稼働病院でした。

高野病院を創設した高野英男元院長が、精神科病院を救急病院に変えて診療を続けましたが、医師や看護師、物資が不足し、ライフラインも寸断された中での苦労は、想像を絶するものだったと思います。

当初は「震災で大変だったのだろう」という程度の想像しかできませんでしたが、診療継続の苦難が綴られた書籍「福島原発22キロ 高野病院奮戦記 がんばってるね！じむちょー」を拝読し、病院の苦労や当時事務長だった高野己保（みお）前理事長の情熱が非常に伝わってきました。

書籍には、事故による混乱や入院患者移送の苦労、看護師不足、行政・東京電力とのやり取りなど、震災後の緊迫した様子が描かれていたのですが、掲載された高野前理事長の写真はすべて笑顔でした。

あれほど多忙な状況の中で笑顔を見せられるとは、どれほど心が強い方なのだろうと感銘を受けました。

全国の病院経営の立て直しに取り組んできた経験を通して、地域医療の重要性を痛感しました。

そんな中、震災後も「重症患者をむやみに移送させることはできない」との一心で地域医療を守り続けてきた高野病院が、後継者探しに苦労していることを知りました。

高野前理事長から「病院経営を引き継いでほしい」という話があったとき、「これこそが自分の使命だ」と一念発起し、2023年11月に承継を決意しました。

未だに双葉郡の人口は減少したままです。
しかし、住民がいる限り医療は不可欠なので、双葉郡の病院機能を失うわけにはいきません。

地域医療を守る唯一の病院が高野病院なのです。
承継後は、救急医療の再開や訪問診療の開始など改革を進め、閉院を考えていた他の医療機関の支援も行いました。

行政からの補助金が減少し続ける中、病院経営はますます困難な状況ですが、地域の皆様にはこうした取り組みを評価いただいています。
今後は一病院の問題としてではなく、日本の地域医療を守るという観点から、M&Aなども活用しながら病院相互の連携を強化していく方針です。
現在、北海道から沖縄まで多くのクリニックや病院が、当法人との提携を希望してくださっています。

高野病院では医師、看護師、ヘルパー、薬剤師、リハビリ従事者など、さまざまな職種の医療スタッフが不足しています。
原発事故が発生したという地域柄、スタッフの採用は容易ではありません。
現スタッフは震災の経験者が多いのですが、「高野病院を守る」という強い信念のもとで働いており、患者様にも優しく対応し、本当に頼もしい限りです。

震災後、高野病院は広野町周辺地域で唯一、入院診療が可能な医療機関として、地域の復興を支えてきました。
この地に唯一残った病院として、医療サービスの提供を続け、未来に向けて復興の道を歩んでいる途中です。
私たちと一緒に、その道を歩んでいただけるスタッフを求めています。

病棟は内科療養病棟と認知症病棟から構成されており、他の医療機関のような残業はほとんどありません。
自然豊かな場所にあり、落ち着いた環境で仕事に取り組めるのも魅力です。

高野病院は109床という小・中規模の病院であるため、スタッフ間のコミュニケーションは非常に良好です。
小規模組織ならではの機動性の高さを活かし、救急外来の再開や訪問診療の開始もスムーズに進めることができました。

地域医療の重要性に関するスタッフの意識も高く、新しい取り組みに積極的に挑戦しようという意欲にあふれています。

看護部を中心に内外の研修システムが充実しており、研修費用に関する補助も行っています。
また、准看護師から看護師に移行するための通信教育などに対して各種の奨学金制度も設けています。

患者様の話を聞く時間を多く取り、医療だけではなく精神面の支えになれるように心掛けています。

通院が困難な患者様には、行政のサービス以外に当院の訪問診療を活用いただき、ご希望に沿った在宅医療を提供できるようにしています。
また、近隣の町村で閉院の危機にある医療機関への支援を行い、住民が医療を受けられる機会が失われないように努力しています。

福島県の医療が途切れないような対策に取り組んでいることは行政にも認められており、地域住民からも高く評価されています。

私たちのM&Aの目的は、地域医療を守るためです。
全国では多くの医療機関が赤字経営を強いられ、60%近いクリニックや病院は後継者不足に悩んでいます。

地域の医療機関がなくなれば、一番困るのは近隣住民です。
高齢になれば、遠方の医療機関に通院するのも一苦労でしょう。
M&Aによりグループで財務面を支え合うことができれば、スタッフのスムーズな補充も可能になります。

M&Aについては、単なる買収行為と捉える人もいますし、実際に企業などは事業拡大の一環としてビジネスライクに捉えるケースもあります。
しかし私たちは、医療機関のM&Aをあくまでも地域医療を守るための手段と考えています。
グループの理念を実現する最初の承継病院である高野病院は、その中心としての自覚を持ち、責任ある医療を提供しています。

今後、再び震災が起こる可能性も否定できませんが、今はどんな困難も乗り越えられる自信を持てるようになりました。
病院として、自然災害や原発事故に対する充実した備えは欠かせませんが、最後は人の情熱だと考えます。

我々は医療でしか貢献できませんが、今後も地域の医療機関が存在しなければ、平時はもちろん、災害時には特に住民が困ることは明白です。
我々の使命は、地域医療としての高野病院を将来にわたり安定的に維持することだと考えます。

当院は地域の皆様に支えられ、困難を乗り越えてきました。
これからも、皆様とともに成長し続ける病院でありたいと考えています。
多くのクリニック・病院は、財政難と後継者不在に悩まされていますが、誰かがこの問題に向き合わなければ地域医療は崩壊してしまいます。

地域医療を守り抜くには、今ここで立ち上がることこそ大切です。
私どもの理念を理解し、共に働いてくださる医療従事者を募集しています。